【映画で学ぶ】概説!!サメ映画の歴史 ~『MEG ザ・モンスターズ2』公開記念~

サメ映画の歴史

2023年8月25日(金)、ジェイソン・ステイサム主演の大作サメ映画『MEG ザ・モンスターズ2』が公開された。今回は本作の公開を記念して、人々を海から遠ざけ続ける一大映画ジャンル、”サメ映画”の歴史を概説する。

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【1914年~1970年代】サメ映画黎明期

サメとの戦いという主題は水中撮影と同時に始まっている。世界初の水中撮影を成功させたとされるサブマリン フィルム コーポレーションのジョン・アーネスト・ウィリアムソンは、監督作『Thirty Leagues Under the Sea』(1914)の中で、サメとの格闘シーンを描いている。

精巧な模型やCGなどがない時代では、実際に生きているサメを撮影するほかなかった。伝説のホホジロザメを探しに行く『White Death』(1936)、サメ漁師を描いた『Killer shark』(1950)など、『ジョーズ』以前のサメ映画の代表作では、単体で泳いでいるサメや、捕らえたサメを映している場合が多い。

生きたサメを相手に映画を撮るのは、命懸けであり、『The Sharkfighters』(1956)の撮影では実際にクルーがサメの攻撃で死亡した(機材による感電死との説もある。)例もある。

【1975年】『ジョーズ』の登場

サメ映画が新たな展望を見るきっかけとなった作品は、やはり『ジョーズ』(1975)だろう。巨匠スティーブン・スピルバーグの代表作としても知られるこの作品では、可動式のサメの模型(愛称:ブルース)を使用したスリリングな描写が為されている。このブルースは故障の連続だったため、サメの姿がなかなか現れない。だが、見えない恐怖が、ジョン・ウィリアムズの有名なテーマ曲と相まって、強烈な印象を残している。本作は、メガヒットとなり、後のサメ映画に大きな影響を与えた。

【1999年】CGを取り入れて恐怖倍増


1999年、サメ映画にもCGの時代がやって来る。新しい技術を導入しつつ、従来のサメ映画、とりわけ『ジョーズ』へのリスペクトを捧げた作品『ディープブルー』(1999)が製作される。この作品は、アニマトロニクスのサメとCGを使い分け、役者とサメとの近接アクションとCGならではの素早い動きを描いている。技術の進歩により、サメの行動範囲は広がり、狭い通路から、密室まで、場所を選ばずに人間を襲うことが可能になった。近年、行動範囲の拡張はエスカレートし、陸だけでなく、宇宙にまで進出するサメ映画も登場している。

【2000年代前半】洗練される演出と物語

サメ映画といえば、「いつ、どこでサメに襲われるかわからないスリル」が魅力だ。技術の進歩によって、スリリングな描写の可能性は広がった。しかし、技術はすぐにコモディティ化し、似たような作品が量産されてしまう。特にサメ映画はこの傾向が強く、独自の作品を作るには”演出”と”物語”という映画の基本に立ち返ることが重要だろう。


演出面で傑出したサメ映画のひとつが『オープン・ウォーター』(2003)だ。実際の事件を基に、派手な演出を抑えたドキュメンタリータッチで描かれたこの作品は、海に取り残される恐怖×サメの恐怖を雄弁に語っている。

【2000年代後半~2010年代前半】サメ大喜利時代へ

CGが広く普及したことで、あらゆるジャンルでB級CG映画が量産されるようになった。この功罪は、サメ映画にも及ぶ。「こんなところにいたら嫌だ」「こんなサメは嫌だ」の大喜利状態となり、サメ映画が新たな時代に突入する。


竜巻に乗ってきたサメに襲われる『シャークネード』(2013)はシリーズ化される程のカルト的な人気を博した。また、サメとタコのキメラが暴れ回る『シャークトパス』(2010)は、B級映画の帝王、ロジャー・コーマンが製作。こちらも”vsもの”として人気シリーズとなった。

【~2023年】サメ映画の現在地

2000年代後半から2010年代前半にかけて、サメ映画は奇抜さを追い求める傾向にあった。その流れに一石を投じた作品が『ロスト・バケーション』(2016)だ。監督は、『エスター』(2009)で知られるジャウム・コレット=セラ。近年ではドウェイン・ジョンソン主演のDCコミック原作映画『ブラックアダム』(2022)を監督する売れっ子だ。限られたシチュエーションを利用したスリリングな描写と母親の死を受け入れる人間ドラマを描いた本作は、偏重気味にあったサメ映画を人間ドラマに立ち返らせた。


『ロスト・バケーション』の翌年には、シャークケイジごと海底深くに閉じ込められた姉妹を描いた『海底47m』(2017)が製作される。彼氏に「退屈な人間」のレッテルを張られた姉が妹のためにサメと戦うドラマ性と”海底もの”という新しいシチュエーションを切り開いたこの作品も、サメ映画に新しい風を吹き込んだ一本と言える。


さらに翌2018年にイギリスのアクションスター、ジェイソン・ステイサムを主演に迎えた『MEG ザ・モンスター』(2018)が公開される。かつて実在した20m級の超巨大サメ・メガロドンが海底深くで生きていたという設定の本作は、米中合作という新しい座組のサメ映画となっている。ドラマ性の高さという点では褒められた作品ではないかもしれないが、大量の資本を投じ、ハリウッドスターを起用するほど、サメ映画の地位が向上した一例といえるだろう。

サメ映画がもたらしたもの


良くも悪くも、見ている人々に大きな影響を与えるだけの力を映画は持っている。『JAWS』のヒット以来、”サメ=人を襲う危険生物”というイメージがついてしまった。実際、私自身も、サメは獰猛な生物で、海で出くわしてしまったら最後だと思っている。

しかし、実際のところサメはどれだけ危険な生物なのか。人間を殺す代表的な生物について、興味深いデータがある。以下の資料によれば、サメは映画として撮られている本数が最も多いにも関わらず、実際に人を殺す件数は極めて少ないようだ。最も人を殺している生物は”蚊”らしいので、”蚊映画”を作る方が実際の被害件数とマッチしているということになる。
Graph showing the number of human deaths per year versus the number of films of selected animal group, of a total of 442 films. Note that the x axis is not to scale.
Rasia, Luciano. (2022). Journal of Geek Studies Killer animals in films: reality vs fiction.

自然界に生きるサメの姿

映画が作り出したサメのイメージを払拭するのもまた、映画である。


海にまつわる女性たちを追ったドキュメンタリー映画『SHE IS OCEAN』(2018)に登場するフリー・ダイバーのオーシャン・ラムジーは、サメがどういう生物なのかを教えてくれる。彼女がその身一つでホオジロサメと一緒に泳いでいる姿を見ると、”共存”という選択肢をとることも十分に可能だと思える。彼女が言う通り、「海は人間の所有物ではなく、訪問者として他の生物に敬意を持って、交流すること」が何より大切なのだろう。

サメ映画の歴史を知るためのおすすめ作品5選レビュー

『JAWS』

『JAWS/ジョーズ』

サメ映画の歴史的転換点

『ディープ・ブルー』

『ディープ・ブルー』

CG×”サメ映画”時代到来

『ロスト・バケーション』

『ロスト・バケーション』
シチュエーションスリラー×”サメ映画”の最高傑作

『海底47m』

『海底47m』
“海底もの”の登場

『MEG ザ・モンスター』

『MEG ザ・モンスター』
20m級の巨大ザメ VS 俺たちのステイサム

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