『JAWS/ジョーズ』サメ映画の歴史的転換点

サメ映画の歴史的転換点

作品情報

『JAWS/ジョーズ』(アメリカ/1975年/124分/原題:JAWS)

監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:ピーター・ベンチリー、
出演:ロイ・シャイダー、ロバート・ショウ、リチャード・ドレイファス、ロレイン・ゲイリー、カール・ゴットリーブ、マーレイ・ハミルトン、ジェフリー・クレイマー、スーザン・バックリーニ、ジョナサン・フィレイ、クリス・レベロ

3.7

あらすじ

観光地として多くの人々が訪れるアミティ島の浜に若い女性の死体が上がった。ニューヨークから赴任した警察署長のブロディは死体の一部を見て、サメに襲われた可能性を疑う。ブロディはビーチの封鎖を試みるも、島の独立記念祭と観光シーズンが重なるビジネスチャンスを逃してしまうと市長から反対を受ける。女性の死因は船のスクリューによるものと改ざんされ、海開きをするが、新たな犠牲者が出てしまう。

新たな犠牲者は少年だった。大勢の観光客が事件は起こり、もはやサメの存在を隠し通すことは出来なかった。サメの駆除に懸賞金を出したことで、アメリカ中から金目当てのハンターが訪れる。駆除されたサメが水揚げされ、島民は安堵。再び海が開かれることになる。しかし、騒ぎを聞きつけてやって来た海洋学者のフーパーは、そのサメがイタチザメであり、事件を起こしたサメではないことを指摘する。事実、解剖したサメの胃袋からはルイジアナのプレートが出てくるのみだった。事件を起こしたサメを探しに、ブロディとフーパーは海に出る。海底に沈んだボートにはホオジロザメの歯が刺さっていた。しかし、フーパーは、狩りに出たハンターの死体に驚き、証拠となるサメの歯を落としてしまう。証拠がないため、海岸閉鎖の交渉は難航する中、再びサメが現れる。ブロディと市長は自分の子どもたちが間一髪のところで、助かったことで、サメ退治に本腰を入れることに決める。有力な地元のサメ漁師クイントとともに、ブロディとフーパーは海に出る。標的のホオジロザメは巨大で、利口なうえ、ブロディとフーパーは狩りの素人のため、狩りは難航する。一時休戦となった夜、クイントとフーパーはお互いの傷自慢で盛り上がる。話の流れで、クイントはサメの襲撃で有名なインディアナ号の生き残りであることがわかる。サメ退治は命懸けであることを共有した三人は、再び、サメとの戦いを始める。クイントに無線を壊され、助けを呼ぶことも出来ない状況で、サメを捕らえることに成功する。打ち込んだタルで体力を削るが、サメの勢いは止まらず、エンジンが出火してしまう。サメ用のケージに入り、毒針を打ち込もうとするが、圧倒的な力でケージは破壊され、船も沈み始める。船に突撃したサメにクイントが食われてしまい、ブロディは独り戦いを続けることになる。サメの口にガスボンベを蹴り入れ、爆発させることで、遂に戦いは決着した。サメの攻撃から逃れていたフーパーと合流し、二人は船の残骸に掴まって陸を目指すのだった。

おすすめポイント

巨匠スティーブン・スピルバーグの代表作にして、サメ映画の金字塔となった作品。水面下から海面に浮かぶ人間たちを狙うサメの視点とジョン・ウィリアムスの有名なテーマが相まって、強烈なスリルを生み出す。あまりの恐怖に、卒倒する観客も出た本作は、メガヒットとなり、ホオジロザメ=人食いザメのイメージを作り出した。

感想

島存続のための切実な物語

サメ映画の金字塔として、まず恐ろしいサメの描写が印象に残る。一方で、脚本に目を向けると、なかなか切実な物語であることがわかる。アミティ島の経済は観光客のインバウンドに頼りきりで、観光資源であるビーチが閉鎖されることは島の経済基盤を失うという切実な現実を意味している。この逃れようのない現実を誤魔化そうと、もう一方の”サメ”という現実を黙殺しようとする気持ちもわからなくはない。それだけ切実な状況で、陸から海まで事件解決に奔走する署長のブロディのストレスフルな暮らしぶりを見る”お仕事ムービー”的な楽しみ方が出来るのも本作の売りの一つだろう。

『シン・ゴジラ』の先駆的な作品?

島の暮らしという”現実”とそれを破壊しようとするサメという”現実”。この「”現実”対”現実”」の構図は、『シン・ゴジラ』(2016)の先駆けになっているといえるだろう。『シン・ゴジラ』の場合、「”現実”対”虚構”」という構図を使っている。首都・東京を襲う怪物を描いているため、対応策の決定フローも全く異なっている。

『JAWS』に話を戻すと、サメへの対応策の決定は市長の一声に依存しており、田舎ならではの”地元有力者権力持ちすぎ問題”への批判を描いた側面もある。その文脈では、サメ退治に向かうブロディ署長は自ら現場に赴いて問題解決をする理想的なヒーローとして描かれている。原作ではエレンとフーパーの兄が元恋人だったこともあり、ブロディが2人の関係を疑うという流れが存在するらしく、ブロディ署長のヒーロー像が崩れてしまいそうなものだ。しかし、そこはさすがのスピルバーグ。不倫の流れはバッサリカットして、エンタメとして見やすいように、見事な脚色を行っている。

現実が一番怖い

スピルバーグによる脚色のひとつに、クイントがインディアナ号の生き残りだったという設定の追加がある。インディアナ号は原爆の部品を輸送する極秘任務に就いていたそうで、輸送完了後に日本の潜水艦によって、撃沈されたらしい。この時点でも1本の作品になるレベルだが、撃沈後に海で漂流する乗組員たちを襲ったサメによる襲撃事件は歴史上稀に見る被害者数だったそうだ。さらに恐ろしいことに、サメによる死者は映画で描かれているよりも少なく、実際は精神錯乱や凍死などが原因で死に至った人が多かったらしい。これだけ恐ろしいエピソードをサラっと取り入れて、映画の推進力を上げるスピルバーグには狂気すら感じる。

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