【FILM REVIEW】『辰巳』とにかく熱量の高い、令和を代表する任侠劇

『辰巳』

とにかく熱量の高い、令和を代表する任侠劇

作品情報

『辰巳』(日本/2023年/108分)

監督:小路紘史
脚本:小路紘史
出演:遠藤雄弥、森田想、後藤剛範、佐藤五郎、倉本朋幸、松本亮、渡部龍平、龜田七海、足立智充、藤原季節
配給:インターフィルム

3.2

あらすじ

ヤクザの組員として、死体の解体を生業とする辰巳。ある日、組の金が盗まれたことをきっかけに組員内での争いが始まる。元恋人、京子から、彼女の妹の葵が盗みの犯人と疑われていると相談を受けた辰巳は、手癖の悪い葵と争いつつも、徐々に彼女を特別な存在として認めていく。しかし、悪名高い組員の竜二が彼らの後を追っていた―。

おすすめポイント

熱量の高い令和の任侠もの

『ケンとカズ』(2016)以来、8年ぶりとなる小路紘史監督作。『ケンとカズ』で描かれた裏社会を生きる男たちが熱量アツアツで帰ってきた。

暴力団の取り締まりが厳しくなり、存続が厳しいという話は藤井道人監督作『ヤクザと家族』(2021)でも描かれていた。この作品で磯村勇斗が演じていたインテリヤクザのように賢い稼ぎ方を知らない従来型のヤクザは、金策に必死になって常に貧しい状況にある。少ない金の奪い合いに発展し、金を盗んで逃げた裏切り者は死に値する。そんな状況に、真っすぐに親父への忠誠を誓って動いてきた辰巳は巻き込まれていく。

『仁義なき戦い』オマージュのキレッキレなOPから始まり、「よくぞここまで集めた!」と驚嘆するほどの強面が勢ぞろいし、汗と熱気でジリジリとした雰囲気が続く。令和の任侠ものの決定版といえるほどの熱気が魅力のひとつだ。

名役者が勢揃い

主人公の辰巳を演じる遠藤雄弥は、今話題の山崎貴の劇場デビュー作『ジュブナイル』(2000)に子役として主演。直近では『ONODA一万夜を越えて』(2021)などキャリアが長い。辰巳の相棒となる葵を演じる森田想も子役出身。『アイスと雨音』(2018)で主演を演じ、以降も次々と話題作に出演している。

裏社会は基本的に男が中心に描かれるため、男女を主役とした作品を作るのは難しいように思う。しかも、本作では微妙な年齢差もあるので、2人の距離感が近づいていく様を演出するのには苦労しそうだ。しかし、後藤剛範演じる厳しくも優しい後藤や、辰巳と葵の懸け橋になる龜田七海演じる京子や、2人を追いつめる狂犬、竜二を演じた倉本朋幸など名役者たちの演技もあり、辰巳と葵の絶妙な距離感を素直に受け入れられた。本作は遠藤雄弥と森田想の新たな代表作といえるだろう。

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