【FILM REVIEW】『ディープ・ブルー』俺たちのサミュエルが…!!

『ディープ・ブルー』

俺たちのサミュエルが…!!

作品情報

『ディープ・ブルー』(アメリカ/1999年/104分/原題:Deep Blue Sea)

監督:レニー・ハーリン
脚本:ダンカン・ケネディ、ウェイン・パワーズ、ドナ・パワーズ
出演:トーマス・ジェーン、サフロン・バロウズ、サミュエル・L・ジャクソン、LL・クール・J、ジャクリーン・マッケンジー、マイケル・ラパポート、ステラン・スカルスガルド、アイダ・タートゥーロ、ダニエル・レイ、ブレント・ローム

3.6

あらすじ

科学者のスーザンは、海洋に建設された研究施設アクアティカでアルツハイマー病の治療薬の開発・研究を行っていた。実験にはサメの脳細胞が使われていた。ある日、実験用のサメが脱走する事件が発生し、被害が出る前に”サメの番人”と自称する施設職員のカーターが捕獲した。この事件で、研究への投資が危ぶまれる状況となり、スーザンは早急に治療薬を完成させなければいけない状況に追い込まれる。

スーザンは視察のため、製薬会社の社長ラッセルをアクアティカに招く。施設では、実験用に3匹の個体がチタン製の檻で飼育されていた。そのうちの一体の脳細胞で実験をしたところ、アルツハイマー病への効果が確認された。実験の成功に喜ぶ一同であったが、サメに近寄ったジムの腕が食いちぎられてしまう。ハリケーンが迫る中、ジムを搬送するヘリが到着するが、ワイヤーリールの故障により、ジムは実験用のサメが飼育される生けすに落下。サメはジムを施設のガラスに激突し、破壊させ、施設と海が繋がってしまう。
カーターたちは浸水する施設から脱出するため、施設内を逃げ回る。ラッセルがサメの異常な行動の理由を問い詰めると、スーザンは実験のため、盟約を破り、サメの脳を肥大化させたことを白状する。その頃、別の階ではコックのプリーチャーが飼っていたオウムのバードを探していた。調理室でバードを見つけるが、目の前でサメに食われてしまう。サメに追われ、オーブンに逃げ込むも、スイッチを押され、窮地に追い込まれる。何とかオーブンから脱出したプリーチャーはガス爆発により、1匹目の駆除に成功する。脱出のために、生けすを通るか、留まって水圧に押しつぶされるかの選択を迫られ困惑する一同。言い争いを止めるため、説得を始めるラッセルだったが、水場から現れたサメに食われてしまう。意を決した一同は通路の梯子を登るが、水圧で崩壊した部屋からサメが侵入、また一人犠牲になってしまう。プリーチャーが合流し、脱出に向けた作戦を立てる。カーターは排水設備を起動させるためスコッグズとともに、設備の電源を入れるが、スコッグズがサメに食われてしまう。一方、実験データを回収するために単独行動をしていたスーザンをサメが襲う。追い込まれたスーザンだったが、ウエットスーツを絶縁体として使用し、サメを感電死させ、事なきを得る。カーター達は遂に海上に到達するも、プリージャーがサメに捕まってしまう。持っていた十字架のペンダントでサメの眼を串刺しにして、逃れたプリージャーは何とか一命をとりとめる。崩壊した施設を眺めながら、カーターはサメが自分たちを利用して、施設を破壊させ、自由のための逃げ道を作らせたことを確信する。最後のサメを殺す覚悟を決め、爆殺用のモリを打ち込もうとするが距離が足りない。スーザンは自らを囮として、サメをおびき寄せ、食われてしまう。カーターもサメと格闘する中、手負いのプリージャーがモリを打ち込み、最後のサメを殺す。生き残った二人は神に感謝する。

おすすめポイント

本格的なCGを使ったサメ映画の元祖。アニマトロニクスを使ったアクションシーンと超速で動き回るサメはCGが発達した今でも見劣りしない。『JAWS』へのオマージュたっぷりでサメ映画愛が感じられる一作。

感想

サメが嫌いになったきっかけ

私の映画体験は午後のロードショーでやっているようなアクション映画から始まっている。中でも、『ザ・グリード』(1998)のようなモンスターアクションは大好物だった。海の無い土地で育ったので、サメにおびえることもなかった私が、初めてサメに恐怖した作品が『ディープ・ブルー』だ。絶対に逃げられないスピードで迫って来る高度な知能を持ったサメに絶望し、プールで泳ぐのも嫌なほど、サメにおびえるようになった。一方で、サメを克服したいがために、一時期サメ映画ばかりを見漁っていた時期があったので、非常に思い出深い作品のひとつだ。

海に食われる者

本作の魅力のひとつは意外な人物がサメに食われていくストーリーにある。大抵のモンスターアクションものは主人公とヒロインの2人が助かって、それ以外の人間は殺されて終わるのだが、この作品ではサメの番人カーターとコックのプリーチャーが生き残る。ヒロインのスーザンはサメ退治のために自ら囮となり、なんだかんだで助かるのかと思ったが、あっさりと食べられてしまう(しかもしっかり、身体が噛みちぎられている)。

海に食われる者の法則について、劇中、カーターがラッセルに語るところによれば、金持ちと他人をいたぶる者は殺されるとのことだ。たしかにスーザンは実験を続けるため、職を失うことになると、カーターに脅しをかけていた。最後には改心したが、マッドサイエンティストの一面を持っていたスーザンは海に食われる運命にあったのだろう。

逆に生き残った2人の共通項はなんだろうか。カーターは密輸で逮捕され、仮釈放中にサメの監視員の職に就いた。一方、プリーチャーはスラム育ちで、二人とも、貧しい境遇にあったことが伺える。同じ職場で働いているものの、学者たちや金持ちのラッセルとは属する層が異なっている。そんな2人を救ったのは神のおかげと言わんばかりに、プリーチャーは十字架でサメから逃れ、カーターは生き残って、神に感謝を捧げている。貧しくとも、信心深いものが救われるという宗教チックな終わり方も作品の特徴として挙げられるだろう。

俺たちのサミュエル

最後に、本作の最大の魅力は名優サミュエル・L・ジャクソンだ。ジャンルや製作規模を問わず多くの作品に出演するサミュエルが、最も悲惨な死に方をしたのは、間違いなくこの作品だ。カーターが金持ちは海に食われると語っていたが、ラッセルは金持ちだが、そんなに嫌味な人物ではなかった。むしろ、パニック状態の一同をまとめるために、人間の残酷さについて語り出す好人物として描かれていた。そんな彼が演説の終わりかけに食われてしまうなんて…。このギャップを楽しめずにいられない。それがサメ映画なのだから。

コメント

タイトルとURLをコピーしました