【FILM REVIEW】『マッドマックス 怒りのデス・ロード』脳快!世紀末デスレース

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

脳快!世紀末デスレース

作品情報

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(アメリカ/2015年/120分/原題:Mad Max: Fury Road)

監督:ジョージ・ミラー
脚本:ジョージ・ミラー
出演:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ロージー・ハンティントン=ホワイトリー、ゾーイ・クラヴィッツ、ニコラス・ホルト、ライリー・キーオ、ネイサン・ジョーンズ、ヒュー・キース・バーン、アンガス・サンプソン、メリッサ・ジャファー

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あらすじ

石油不足と水不足により、核戦争が勃発。荒廃した世界を生きる元警官のマックスはウォー・ボーイズに捕えられる。彼らの指導者イモータン・ジョーは大隊長フュリオサにガソリンの調達を命じる。しかし、ガス・タウンへ向かう道中、フュリオサが駆るトレーラー、ウォー・タンクは進路を変える。異変を察知したイモータン・ジョーは、フュリオサが子供を産む役目の女たち、ワイブズを連れて逃げ出したことに気づく。ここから死のレースが始まる。

フュリオサを追うウォーボーイズたち。ウォーボーイズは捕らえた奴隷から血を輸血することで生きながらえていた。マックスは若きウォーボーイ・ニュークスの輸血袋として、追跡に連れていかれる。
敵対勢力が駆るヤマアラシの追撃を交わしたフュリオサ一行は砂嵐に突入する。部隊の先頭を走っていたニュークスも追撃するが、砂嵐に巻き込まれてしまう。目覚めたマックスは気絶したニュークスを連れ、水浴びをしていたフュリオサ一行を襲い、ウォー・タンクを奪う。しかし、タンクはフュリオサ専用に改造されていた。マックスはフュリオサ一行を乗せ、逃走を続ける。
人喰い男爵率いるガスタウン軍に追われるマックス達は、イワオニ族がナワバリとしている谷に逃げ込む。フュリオサはイワオニ族と取引するためにガソリンを届けたが、イモータン・ジョー率いる追手の多さのため交渉は決裂する。ガソリンを奪いに来るイワオニ族を撃退したマックス達だったが、今度はイモータン・ジョーがやって来る。神と崇めるジョーに鼓舞され、マックスを殺しに行くニュークスだったが、鎖が絡み、身動きが取れなくなった挙句、ジョーから見捨てられてしまう。ジョーの追撃をかわすため、車外に出たワイブズの1人・スプレンディドが犠牲となってしまう。自分の子を孕んでいたスプレンディドを失い、イモータン・ジョーは激昂する。
デスレースは夜通し続く。ウォー・タンクが泥濘にハマり、立ち往生している隙を狙い、キャタピラ車を駆る武器将軍が襲いかかる。ワイブズの1人ケイパブルに懐柔されたニュークスの機転で、ウォー・タンクは泥濘を脱する。マックスは単身、武器将軍を待ち伏せし、爆殺する。明け方、マックス達は、フュリオサの故郷”緑の地”に辿り着く。鉄馬の女たちがフュリオサの帰還を喜んだのも束の間、フュリオサは故郷の”緑の地”が汚染され、死の土地となっていることを知り慟哭する。一行は水と緑があるイモータン・ジョーの砦に戻る決意を固め、来た道を戻りはじめる。激しいデッドヒードの末、イモータン・ジョー達を倒すが、追手の道を塞ぐためにニュークスが犠牲となる。フュリオサもまた、致命傷を負い死にかけるが、マックスが輸血し、一命を取り留める。砦に戻り、イモータン・ジョーの死体を見た民衆は、フュリオサを英雄として讃える。新しい時代の幕開けを感じさせるように、開放された水源に人々は歓喜する。フュリオサは、去っていくマックスを見つめる。

おすすめポイント

世紀末を舞台に繰り広げられるデスレースを描き、カルト的人気を集めた作品。前作『マッド・マックス/サンダードーム』(1985)から約30年の時を経て蘇ったシリーズ第4作は、第88回アカデミー賞で最多6部門を受賞する評価を得た。度肝を抜かれる爆破量とハイセンスな車両や風景描写が目と心を奪う圧巻の120分。圧倒的に強い女性像が魅力的な女戦士フュリオサの勇姿にも注目。

感想

“デスレースもの”の最高傑作

映画と列車は相性が良い。エドウィン・S・ポーターの『大列車強盗』(1903)に始まる列車を舞台にしたアクションは、車の普及とともに、カーアクションへと派生していった。カーアクションの人気ジャンルの一つといえるのが”デスレースもの”だ。

“デスレースもの”の初期作品『デスレース2000年』(1975)は車で人を轢き殺してポイントを稼ぐ、なんとも下品な物語だった。しかし、『マッド・マックス』(1979)は息子を失った男の復讐劇という真っ当な物語性を得た快作に仕上がった。

時は流れて2015年。『マッド・マックス』シリーズ第4作として製作された本作『マッド・マックス 怒りのデスロード』は主人公のマックスを置き去りにする魅力を放つ女戦士フュリオサが復讐を果たし、自由を手に入れるまでの戦いを描いている。

それまでの”デスレースもの”とは一線を画するスタイリッシュな映像が本作の魅力の一つである。魔改造された車達が砂を巻き上げながらオレンジ色の荒野を走る。砂嵐が吹き荒れ、真っ青な砂漠が”死”を象徴する。その映像を追うだけでも脳が踊る快感を得られること間違いなしだ。

女戦士フュリオサ

この作品はとにかく魅力的なキャラクターが多い。”理想の上司”としてSNSでバズっていたイモータン・ジョー。愛に目覚め、神であるイモータン・ジョーに反旗を翻す男ニュークス。ニコラス・ウィンデング・レフンの『ネオン・デーモン』(2016)やM・ナイト・シャマランの『オールド』(2021)で存在感を放つ役柄を演じたアビー・リー・カーショウはワイブズの中でも印象的だった。

脳筋キャラのリクタスや武器将軍、バーニングギタリストのドーフウォーリアーも捨てがたいが、やはり、この作品を牽引しているのは、主役のはずのマックスを食う存在感を見せた女戦士フュリオサだ。

本作は西部劇の要素を多分に含んでいるのだが、フュリオサの存在が、通常のそれとは違った魅力を出している。流れ者の主人公がその土地の権力者に虐げられる民を救うプロットはよくあるが、本作の場合、フュリオサが圧倒的な強さを見せている。

物語の流れも、奴隷であったフュリオサが囚われの女性を救い出し、自由を勝ち取るリベンジものになっている。故郷を離れ、奴隷として耐えてきた女性が新たな王となるまでの壮大な物語。新たな女性ヒーローの誕生が女性活躍の時代と呼応している。

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