【映画祭】ぴあフィルムフェスティバル2023 コンペティション入選22作をレビュー

【映画祭】ぴあフィルムフェスティバル2023 コンペティション入選22作をレビュー

自主映画の登竜門として知られる、ぴあフィルムフェスティバルが2023年9月9日(土)から開催されている。今年で45回目を迎える本映画祭、コンペティション部門「PFFアワード」の入選本数は22作品。本記事では、557本の応募作の中から選ばれたPFFアワード入選作品の魅力を紹介する。


【総評】

今年のぴあフィルムフェスティバルはショートムービーがトレンドになった年といえる。PFFアワード作品全体の平均分数は、昨年の51分から40分へと短くなっている。30分以下の作品数が10本入選しており、各SNSで流行するショートムービーの流れが映画にも反映されていると考えられる。

上映分数が短くなることで作品の強度は落ちるのだろうか。今年の入選作品を見る限り、短い時間の中で伝えるべきメッセージを的確に伝えるロジックが確立されているように思う。

美しさを追い求める代償を描いた『ちょっと吐くね』、人と繋がることの大切さを説いた『ただいまはいまだ』、学生時代の悩みをストレートに描いた『こころざしと東京の街』は、作品に必要な時間に自覚的で、うまく着地が決まった作品だった。

感情が数値化出来る世界を描く『サッドカラー』、アンドロイドの実験を描いたSF作品『Flip-Up Tonic』、黄泉がえりをテーマに父と子の再会を描く『うらぼんえ』は短い時間の中で、物語を展開させる巧みさに驚かされた。

非現実的な未来都市を描いた『ParkingArea』、肉を通して人生を振り返るエッセイアニメーション『肉にまつわる日常の話、強烈な表現で男女の愛を描いた『Sewing Love』、人のいなくなった部屋を切り取った技ありの一本『不在の出来事』は、わずか10分ほどで強烈な印象を残した。

短い時間で最も強烈な印象を受けた作品が、技能実習生の闇を描いた『ハーフタイム』だ。社会問題を描くためには綿密な取材と構成力が必要になる。作り手にとっても伝えたいことが多すぎて、上映分数を短くするのは至難の業だろう。本作はわずか30分の中に、技能実習制度の欠点が詰まっており、その内容に辟易させられた。

ショートムービーが流行する一方で、長編作品はどのように生き残っていくのか。月並みな表現ではあるが、爆発する個性が作品を支えるというのが一つの結論だ。

幼馴染に想いを馳せる様子を特徴的な歌謡曲を用いて表現した『完璧な若い女性』、架空の実験用人類と人間の交流を描いた『ホモ・アミークス』劇中映画を用いた巧みな脚本に魅了される『リテイク』、ちょっとやんちゃな高校生4人組の青春を切なく描いた『鳥籠』、少女が母の死を受け入れるまでの過程を繊細に描いた『ふれる』、日常から逃げ出す男女の逃避行を描いた『逃避』、親友との哲学的会話から失っていた感情を呼び起こす『じゃ、また。』、現実と朝ドラが交差する異色作『また来週』はどれも作り手の個性に溢れた作品だった。

自主映画ならではの作り手の個性を最も感じさせたのが、戦いがすべての世界で、己の拳を封じた男を描いた『USE BY YOUTH』だ。作り手の”好き”が詰まった作品は見ていて気持ちがいい。こういった作品に出会えるのも、自主映画の魅力だ。

本年度の入選作品の中で、特に自分に新しい気づきを与えてくれたのは、障がい者の生きる世界を描いた『リバーシブル/リバーシブル』と他者の記憶をトレースするアート作品『移動する記憶装置展』だ。いずれの作品も自分の日常とかけ離れたように見えるが、周囲を見回せば確かに存在している別の日常を描いている。隣り合っているけれど、関わることのなかった世界。そこに生きる人々の存在を感じることが出来るのが映画の魅力だ。改めて映画の魅力に気づかせてくれるそんな作品に出会えたことに感謝したい。


【各作品短評】

『完璧な若い女性』(監督:渡邉龍平)

ずっと、もどかしい

あらすじ
花火を見るため、従兄弟の江莉夏の車に乗り、地元の静岡に帰郷する黒部。道中、幼馴染の汐音から届いた『Perfect Young Lady』のカセットテープを聞き、汐音に思いを馳せる。

江莉夏の勧めで、久々に母親と会った黒部は、汐音が引っ越していたことを知る。社長業で忙しい母は、すぐに仕事に戻ってしまい、偶然そばに居た母の会社の女性社員と話すことになった黒部。”完璧な若い女性”の捉え方は人それぞれで、母親も”完璧な若い女性”であると教えられる。
黒部は実家の喫茶店を継いだ友人と初恋について話す。その後、たまたま手配ミスで部屋にやって来た友人の元恋人で、今はデリヘル嬢として働いているメロンとも初恋について話す。
楽しみにしていた花火は台風で中止となった。親戚と墓参りに行った帰りに、黒部と江莉夏は閉館したプールを訪れる。江莉夏はPerfect Young Ladyを歌っているのが誰なのか知っているらしいが、その答えを黒部に教えることはなかった。黒部は汐音が歌っているであろうと考え、曲を聴くが、テープが切れてしまう。テープを直して江莉夏に返すをして解散しようとするが、江莉夏は黒部を呼び戻し、またすぐに会う約束をする。

感想
とにかく、もどかしい。タイトルにもなっている””完璧な若い女性””とは誰なのかを探すストーリーだったはずが、江莉夏が放った一言で、目の前にある2人の関係性が最重要事項になってくる。

長らく会っていない初恋の女性・汐音は、黒部が生み出した””理想の女性””に姿を変え、ノリの良い曲に合わせて笑顔で歌を歌い続けるだけだ。

言い換えれば、初恋(≒完璧な若い女性)より、今目の前に居る女性の方こそ大切にすべきということだろう。しかし、この作品の場合、障害が大きく、あまりにもどかしい。

2023年/カラー/65分
製作・脚本・監督:渡邉龍平/助監督・スチール・撮影:サマサ・シシースター/撮影:鈴木陽太郎/照明:八森香央海/録音・整音・ミキシング:青山武生
出演:perfect young lady、大友晶太郎、竹内 春、新井吉亮、田中由美子

『ホモ・アミークス』(監督:馬渕ありさ)

生体実験をめぐる挑戦的なSF作品

あらすじ
人の命を救う仕事をするために入った職場は新薬開発のため、ホモ・アミークスという人型生物を使った生体実験を行う施設だった。ある日、研究員の田代は他のホモ・アミークスと比べてかなり大人しい個体”802″と出会う。

“802”は指をしゃぶる特徴があり、田代はそんな”802″に興味を抱いた。ある日、施設で交配をすることになり、田代はホモ・アミークスの、そして”802″の交尾を初めて見る。
その後、”802″が慌ただしく「やめろ」と言っている様子から、交尾した相手と会いたがっていると察した田代は、”802″の檻を開けたまま部屋を出てしまう。”802″は脱走し、自由を手に入れるが、すぐに研究員に捕獲されてしまう。
田代は、脱走事件の責任をとり、”802″の担当を外される。しかし、”802″が処分される夢を見た田代は、施設に戻り、”802″を救出。そのまま、施設を脱走する。

感想
挑戦的な作品。if(もしも)ものを作る場合、物語上の嘘(文学装置)は1つが限界だと私は考えている。それがタイムマシンであれ、異星人であれ、現実世界に存在しないものが1つ以上出てくると、娯楽映画として捉えてしまう。私にとって、娯楽映画は物語性に優れていなくとも、ド派手な映像や物語以外の要素で補って楽しめる作品という認識だ。

この作品は娯楽映画を目指しているのではなく、人間と他の生物との共存を、「物語」を通して伝えたい作品だと考えている。物語上の嘘は「ホモ・アミークス」という人型生物で、生体実験に使われている。

動物を使った生体実験は現実に行われており、これを人間に置き換えることで、現実を批判する力を高めている。しかし、ホモ・アミークスと人間の共存に至る説得力を持たせるだけの描写が足りなかった。

ホモ・アミークスとの交流の入口は、他の個体との差異であり、その差異は指をしゃぶる仕草で表されている。私はここで、物語を追うのを渋ってしまった。嘘とまでは言わないまでも、田代のように、指をしゃぶる仕草で愛に似た感情を感じるのは難しかった。きっと脱走に至ったのは、田代だったからだと、自分と作品との間に壁が生まれてしまった。

2023年/カラー/42分
監督・脚本・編集:馬渕ありさ/撮影:哉司/録音:佐藤 開/音楽:Peno/キャスティング協力:小原正至
出演:芦原健介、辻 智輝、金子貴伸、須田晶紀子、山ノ内涼太郎

『リテイク』(監督:中野晃太)

監督という権力者

あらすじ
写真が趣味の高校生・景は、川で見かけた同級生の遊の写真を撮る。映画制作を考えていた遊は盗撮したことと引き換えに、景をカメラマンに誘う。景の友人の二郎と、遊の後輩・海をキャスティングし、撮影がスタートする。

マイクが必要になり、夏季休暇中の学校にわざわざ忍び込んだ景と遊は放送室の鍵を拝借し、機材を運び出す。鍵を返し忘れ、学校に戻るところで出会った遊の幼馴染アリサを録音部に誘い、撮影は続く。
遊たちは、時間が止まった世界に向かっていく男女の物語を撮影していた。監督の遊がアリサの提案を受け入れず、マイペースで撮影を続けたことが原因で、アリサは撮影に来なくなってしまった。遊とラストシーンのロケハンに行った帰り道、景は遊に告白する。しかし、遊はアリサの件や、二郎と海が付き合いだしたことなどで、自分の作品は重要ではないと感じていた。その状況での告白に、嫌気が増した遊は撮影にこなくなってしまう。
景はこの状況を打破すべく、ここまでの話をリテイクする。アリサの提案を採用するよう機転を効かせた景は、アリサから遊の過去を聞く。3ピースバンドとして活動していた遊とアリサだったが、ドラムの男子が遊に告白し、付き合いだしたことで、曲作りが出来なくなり、バンドは解散してしまったのだ。
遊の過去を知った景は告白をやめた。そして、クライマックスまで撮影は進み、遊とアリサが作ったエンディングテーマで作品は幕を閉じる。2人はバンドとして再結成する流れになり、景は編集を続けると言い、教室に残った。
景は再び、話をリテイクする。撮影は順調に続いたが、クライマックスに事件が起こる。時間が止まった世界への入口として湖に入っていくシーンの撮影中、海が溺れてしまう。命に別状はなかったが、何のために撮影をしているのか二郎に問われた遊は映画作りを断念する。
景と遊はリテイクを繰り返すが、良い結果に辿り着かない。そして、クライマックスは時間が止まった世界ではなく、進み続ける世界にするべきだと景が提案。作品は進み続け、景たちの現実も進み続ける。


感想
監督は作品世界を編集する絶対的な権力者として、良いものを作りあげる責任を負っている。この作品では、そんな監督の責任を実際にリテイクを繰り返す物語を通して描いている。

本作は『時をかける少女』(1983)や『恋はデジャヴ』(1993)『ドロステのはてで僕ら』(2020)など、いわゆるタイムリープものの構造で描かれている。カメラマンの景はこの物語を自在に編集出来る監督として、リテイクを重ねる。その中で、景自身が成長していく様子も垣間見られる。

1度目のリテイクは自分の告白が失敗し、作品作りが止まってしまうことが原因となっている。しかし、2度目のリテイクでは、遊とアリサがバンドを再開することで、自分が孤立することが原因のように見え、傲慢な印象を受ける。

だが、以降のリテイクは遊も物語を見ていることから、他者の意見を取り入れた世界に向いていく様子が見てとれる。映画制作は参加しているメンバー、とりわけ監督が人間として成長出来る活動である。今後、映画制作を志す人々にとって、とても意義のあるメッセージを映画を通して届けたい力作。

2023年/カラー/110分
監督・脚本・撮影・編集:中野晃太/撮影:柳田修平/録音:飯塚 了、土佐香理/照明:金内直文
出演:麗、武藤優汰、タカノ アレイナ、大原奈子、千葉龍青

『ちょっと吐くね』(監督:大野世愛)

吐いて、自己を認識する。

あらすじ
可愛くなるために、嘔吐を繰り返す柚咲は同じように吐いている静葉と知り合う。トイレの壁越しにお互いの思いを吐露する。

静葉は直接会って話そうと誘うが、自分のルックスにコンプレックスを抱いている柚咲は誘いを断る。静葉が壁越しに手鏡で覗こうとしたため、柚咲はトイレを出る。静葉は柚咲を引き留め、2人は初めてお互いの顔を見る。
静葉は可愛い人でも吐くことを知り、絵を完成させる。しかし、柚咲は自分を覗いたことで、醜い自分を認めた静葉は、もう吐くことは出来ないと糾弾する。無理矢理に吐こうとする静葉を横目に、柚咲は自分も吐きに行く。

感想
可愛くなるために吐く柚咲と醜い自分を認められずに吐く静葉。一見、大差ないように見えるその理由にははっきりと違いがあるようだ。

柚咲は周囲から可愛いと言われたうえで、確立した自己がある状態をショッキング・ピンクと呼んでいる。柚咲はあくまで、自分を高めるために、そして自分を好きになるために吐いていると主張する。一方で、静葉は醜い自分を否定するために吐いている。

アグレッシブに吐くのか、パッシブに吐くのかという捉え方で正しいのかはわからないが、とにかく自分では考えたこともなかったような考え方がショッキングだった。

2023年/カラー/20分
監督・脚本・編集:大野世愛/撮影:吉田 嶺、前川季哉/録音:色川翔太/照明・制作:根岸一平
出演:小澤うい、緋水 綾、高橋輝仁

『鳥籠』(監督:立花 遼)

10代の分岐点

あらすじ
幼馴染の高校生コウダイ、ケンゴ、カズキ、ジンは暇があれば集まって酒とタバコで時間を潰していた。ある日、先輩に絡まれ、断りきれずに大麻を吸ってしまう。

音信不通になっていたカズキと再会し、再び先輩の所へ向かう4人。コウダイは現状を受け入れられず、先輩たちのもとから抜け出す。後日、コウダイは大学進学を決め、勉強を始める。
母親からの許しを得て、塾に通うようになったコウダイ。ある夜、ケンゴとジンに呼び出され、カズキが暴力事件で捕まったことを知る。コウダイは先輩と縁を切ることを勧め、「このままだと腐ると思う」と心境を吐露する。その言葉に、ジンは激昂する。
後日、コウダイは彼女のマリに連れられ、公園に向かうとケンゴとジンが待っていた。仲直りの肩パンを決め、受験でなかなか会えなくなることを了承する。後日、再びケンゴとジンに呼び出されたコウダイは、カズキと再会し、仲直りの肩パン後、今後はなかなか会えなくなることを寂しがる。
コウダイは新居に引っ越した。マリを招き、お互い初めてのSEXをしようとする。しかし、母親が男と寝ている姿がフラッシュバックしたコウダイは嘔吐してしまう。
大学生になったコウダイはジンと再会する。マリと別れたこと、ケンゴは彼女が出来て忙しいこと、カズキは相変わらず先輩とつるんでることなど、近況を話し合う。コウダイは今の状況をやめようと伝えるも、ジンは変わらずに地元に居ると言い、その場を解散する。


感想
人生の分岐点はいくつもある。学生時代は特に重要視され、何かに打ち込むこと(目標を持つこと)が推奨される。本作に登場する仲良し4人組は皆、母子家庭で貧しい。家庭環境が彼らをそうさせるのか、毎日駄弁ってなんとなくの時間を過ごしている。

目標を持たない彼らだが、一緒に過ごす時間を無条件に大切にしようとする仲間意識は強い。大人になると何故だか、こういう意識はどんどん薄れてしまうように思う。きっと仕事だとか、家族だとか、それぞれの居場所を見つけていくからだろう。

若い頃は自分の居場所を見つけられなくなることに怯えて、良い悪いを判断せずに、受け入れてくれるコミュニティに入ってしまう。本作の場合は、地元のヤバい先輩に連れ込まれてしまう。ここから抜け出そうとするコウダイは立派だが、そこから抜け出せないカズキが気になってしまう。

タイトルの鳥籠の意味するところは、先輩のコミュニティに限られるように思う。地元やなんとなく過ごす時間は鳥籠ではなく、むしろ今の自分を作り上げる大切な要素になっている。

ラストにコウダイが「一緒に辞めよう」とジンに伝えるが、それの意味するところが3人を残し、自分の居場所を見つけていくはずなので、心配はない。鳥籠から飛び立てなかった鳥たち、特に地元LOVEのジンには幸せになってほしいと、地方民の自分は思う。

2023年/カラー/66分
監督・脚本・企画・編集:立花 遼/撮影・カラーグレーディング:天野伊雄/助監督:山崎真理子/録音・MA・編集:池島 快/衣装:倉田彩音
出演:山﨑龍吾、寺田智彦、上原恭平、奥村海斗、榎風ことは

『サッドカラー』(監督:髙橋栄一)

名台詞爆誕のディストピアSF

あらすじ
悲しみの感情が無いと診断されたミヤ。悲しみが無くなると他人に危害を加える可能性がある。ミヤの夫はミヤに悲しみを取り戻そうとする。

悲しみにまつわる小説、冷めたたこ焼き、お気に入りのグラスが割れる。悲しみを思い起こさせる出来事がミヤに外的変化を与えることはなかった。ミヤは夫が自分を家に閉じ込めることに怒る。
その夜、夫に自分の感情について話をしようとするが、夫は背中を向けたまま、ミヤを愛していると伝える。そのまま部屋を出る夫を追い、風呂場へ向かうと夫はリボルバーを手にしていた。「僕が君の悲しみになる」と告げ、自殺する夫。
ミヤの治療は終わり、医師は「それは悲しいね」とひとりごちる。

感想
感情が測ることが出来る世界。悲しみが無くなると、喜怒楽だけが残り、暴力的になる?ようだ。夫は妻のミヤが悲しみを失ったことを酷く嘆く。しかし、異常な人間になってしまったと思い込んで嘆いているのか、大切な妻の感情が欠落したことを嘆いているのか、夫の真意はわからない。

「僕が君の悲しみになる」は名台詞だと思うが、あの夫が悲しみを思い起こさせるトリガーになるかは大いに疑問である。一瞬も夫婦が楽しく過ごしている描写がない分、皮肉が効いているともいえる。

最後に医師が言った「それは悲しいね」はどういうことなのか。経過が良好=悲しみを感じられるようになった?ことが悲しいということは無感情が推奨される世界なのだろうか。?が詰まった作品。

2023年/カラー/24分
脚本・監督・撮影・衣装・編集・整音:髙橋栄一/プロデューサー・助監督:望月亮佑/照明:三塚俊輔/録音:濵田耕司/録音:岡上亮輔
出演:小沢まゆ、野田英治、保土田寛、髙間ゆめみ

『USE BY YOUTH』(監督:高木万瑠)

愛×拳×青春!

あらすじ
不良たちの間では、ジャンケンの勝者が相手を殴ることがルールとなっていた。ジャンケンの弱い富末は殴られ放題であったが、ルール無用の真田が相手を殴り飛ばす。

真田の両手はテーピングで巻かれ、常に拳を握った状態になっていた。真田は過去にペットの蚊を殺してしまったことの戒めとして、拳を固めた。そして、あらゆる手術を受けて喋ることも出来なくなっていた。
富末の誘いで女子高生の江美利と出会い、観覧車に乗る真田。江美里が蚊を潰したのを見て、真田は反射的に江美里を殴ってしまう。
江美利に謝ろうとするが、会ってもらえない日々が続く。喧嘩をやめ、一方的にヤンキーから殴られている真田を見かけた江美利は真田を許す。そこへボロボロになった富末がやってくる。真田と江美利が一緒にいるところを見て、富末は真田に別れを告げる。除け者の江美利は「ムカつく」とひとりごちる。
江美利は真田の部屋で亡くなった蚊を悼む。その後、江美利は喧嘩場となっている川に向かう。ジャンケンで使う土俵を消す江美利に不良が忍び寄る。そこに富末がかけつけ、不良たちと対峙することになる。江美利は真田に助けを求めに部屋へ向かって走る。しかし、真田が駆けつけた頃には富末は立ったまま死んでいた。
友を失った真田は、眠る江美利に触れ、拳を解放することを決める。苦しみながらも一晩かけて拳は解放された。眠る江美利をおいて、真田は宿敵・岡本との闘いへ向かう。真田はグーしか出せず、岡本に殴られ放題だった。江美利が遅れて駆けつけるが、真田の闘いを見守ることにする。真田を殴り続けたことで、岡本の手はチョキになってしまう。真田はグーで勝つが、殴らない。ついには、パーを出し、自ら負ける真田。真田の奇行に混乱した岡本は真田を乱打するが、真田は耐え、岡本を抱きしめる。
岡本は逃げ出し、江美利が迎えにやって来る。自分を置いて闘いに行ったこと、不器用ながら頑張って作ったご飯を食べなかったことを責めて泣き出す。その姿を見て真田も泣き出し、雨が降る。2人は部屋に戻り、一緒にご飯を食べる。一方その頃、富末と親しかったバーのメイドが、浜辺に打ち上げられた富末の水死体を見つめていた。

感想
ペットの蚊を殺して拳を封印したうえ、ロボトミー手術まで受けているトンデモ設定てんこ盛りの主人公・真田が魅力的。『刃牙』や『北斗の拳』など、男のバトル漫画に通底する「殴り合いの喧嘩=男の土俵」という価値観を、愛の力でぶち壊す。

2023年/カラー/51分
監督・編集:高木万瑠/脚本:秋葉原タイチ/音楽:toulavi/撮影・カラー:宮川 玄/録音・整音:芹沢日向
出演:二宮啓輔、瀬戸璃子、桝屋大河、加藤月乃、白田那千

『ただいまはいまだ』(監督:劉 舸)

ゆるい繋がりの愛しさが詰まっている

あらすじ
中国人留学生の李は、友人の太郎の家に遊びに行くことにする。李は旧友の高の父から息子の様子を見てほしいと頼まれる。高は父と喧嘩して家を出ていた。そんな高を李は遊びに誘う。

太郎の父はボクサーだった。幼少期にはボクサーになることを期待されたが、才能はなかった。太郎は父のことをあまり考えたくはなかった。
太郎の妹のアスカも含めた4人で、ご飯を食べる。高もピアノを習っていたが、太郎のように才能がなく、辞めてしまった。高は吸えないタバコを吸いながら、李と帰郷について話す。
李と高は太郎とスパーリングを始める。太郎に煽られ、徐々にエンジンがかかってきた李は本気のパンチを出す。疲れ果てた3人は部屋に寝転がる。李は父に電話をし、国には帰らないと声を荒げる。翌朝、高は国に帰り、太郎は父を迎えに行く。

感想
母国を出て、他の国で暮らすというのはどういう感覚なのだろうか。地方から都会に引っ越すのとはまた違った異文化体験が李と高を待っていたのだろう。李は日本に溶け込み、高は馴染めずにいる。しかし、喧嘩別れしてしまった以上、簡単には帰れないのはわかる。

馴染めない自分を責めてしまったり、馴染めている人に憧れや嫉妬を覚えることもあるだろう。何のために国を出たのか、そう考えて塞ぎ込んでしまう毎日を高は送っていたのだろう。

そんな高だが、ボクシングをきっかけに自分の気持ちをぶちまける。塞ぎ込んでいる時こそ、気持ちの解放は有効だ。高に触発されるように、太郎も父を迎えに行く。高がボクシングの話に踏み込まなければ、高と太郎が行動を起こすことはなかったかもしれない。人と会うことは、予期せぬきっかけを与えてくれるのだ。

2023年/カラー/28分
監督・脚本・編集:劉 舸/撮影:青石太郎/助監督・美術・カラーグレーディング:王 子易/助監督・記録:鄧 雅文/制作:蘇 暢
出演:郭 嘉雷、アライ ジン、范 西滢、塚田愛実

『移動する記憶装置展』(監督:たかはしそうた)

記憶と共に生きる

あらすじ
横浜市上飯田町でギャラリーを運営する麻子は、アーティストのスミレとルームシェアをしている。創作活動に身が入らないスミレに刺激を与えるため、麻子は映像作家の谷繁さんを呼ぶことにする。

谷繁さんは記憶をテーマにした作品作りを始める。過疎化した地域に住む高齢者の話を聞き、その話を自らがそっくりそのまま話す様子を映像に収めていく。
ある日、偶発的に谷繁さんに怪我を負わせてしまったスミレは、作品作りに参加する。完成した作品は小さなショッピングセンターで展示される。展示を見にきた子どもたちは、町が栄えていた時期に市民が作った神輿に興味津々。そのまま、子どもたちが神輿を担いで町を歩いていく。
展示が終わり、谷繁を見送ったスミレは、自分も部屋を出ると麻子に伝える。

感想
記憶は、個人を形作る要素であり、その人の一部だと言える。昨日食べたハンバーグが美味しかったとか、会社でミスをしたことで気が滅入って長風呂したとか、そんなくだらない記憶の積み重ねで自分は出来ている。

上記の記憶はとても個人的なものだ。一方この作品で扱われるのは、かつて栄えた町の記憶。つまり、たくさんの誰かが共有しているはずの、繋がりのある記憶だ。その記憶を繋ぎ合わせていくと、かつての上飯田町がぼんやりと浮かんでくる。たくさんの記憶が集まって徐々に定まってくるイメージの上で、私たちは過去を知ることが出来る。

この作品で為されているもう一つの試みは、記憶のトレースだ。誰かの語る記憶をそのまま、自分の口から語る。合理化の流れの中で、口頭伝承は廃れた文化になった。より正確な情報を残すためには、文字や映像という優れた記憶装置がある。

人間という記憶装置もまた、時代の流れの中で廃れていった。だが、人間という記憶装置にしか出来ないこともある。記憶は自分を形作る。誰かの記憶をトレースすることで、誰かの一部が自分の一部になる。自分という人間の記憶装置を使う意義を再確認した。

2023年/カラー/71分
監督・脚本:たかはしそうた/プロデューサー:徐 梅/撮影・照明:費 嘉潤/録音・サウンドデザイン:浪瀬駿太/編集:趙 冬梅
出演:佐々木 想、影山祐子、庄司麻子、廣田朋菜、土屋スミレ

『また来週』(監督:ハインズ麻里子)

現実と朝ドラが交差する。

あらすじ
リアルタイムで朝ドラを視聴する女子高生・明咲子。明咲子は朝ドラのせいで、遅刻が続き、留年の危機にさらされている。朝ドラを見ない保健室の先生に、朝ドラの話をしていると、コンクールの練習で寝不足のクラスメイト・夕華がやって来る。明咲子は、録画で朝ドラを見ている夕華と意気投合する。

女優になる夢を持つ主人公は友人からお金を借りて、大阪へ向かう。明咲子はそんな友情に感動していた。しかし、クラスメイトの女子は現実離れした展開に苦言を呈する。明咲子は視聴率の心配をするが、保健室の先生は「全国民に愛される必要はないと思う」とフォローする。
朝ドラの主人公に触発され、オーディションを受ける明咲子。夕華も明咲子の夢を応援してくれていた。明咲子はクラスメイトの女子の父が経営する会社のオーディションを受けていた。オーディションで朝ドラの女優と同じ受け答えをしている映像がリークされ、笑いものにされていることを知る明咲子。
朝ドラの主人公は女優として成功しているが、明咲子は部屋でひきこもる生活を送っていた。保健室の先生から電話で朝ドラの展開を聞かれた明咲子は、現実と朝ドラが混同した回答をしてしまう。「どうかあちら側を見捨てないで頂戴」と保険の先生は伝える。
明咲子は現実を生きることにした。保健室に入り浸るのをやめ、朝ドラは録画して、弁当を作るようになった。勉強にも力を入れ、大学進学を志すようになった。進路面談の帰り道、夕華と出会う。夕華はバイオリンで結果を残せず、引退していた。夕華は保健室の先生からもらった花を明咲子に渡し、去っていく。花の匂いをかいだ明咲子は朝ドラのヒロインの衣装になり、歩みを進める。

感想
現実と虚構が入り混じる作品は多いが、現実と朝ドラが入り混じる作品は初めて見た。自分はほとんど朝ドラを見たことがないが、その雰囲気は何故かわかる。天真爛漫な主人公。持ち前の明るさで周囲を巻き込んでいく。そして、夢を叶える。それが朝ドラだと知らないながらに思っている。

明咲子はそんな朝ドラの世界に憧れている。しかし、現実は厳しく、朝ドラのようにうまくはいかない。朝ドラを見る=日本国民というそれを知って、現実を生きるようになった明咲子を見て、なぜか心苦しくなってしまった。

なぜ心苦しくなったのか。明咲子は「朝ドラには平凡な日常を波乱万丈な一代記に変える力がある。」と語っている。朝ドラに彩られた明咲子の日常は作りものだったのだろうか。明咲子には明咲子の現実があっただけのように私は思う。その現実がたまたま他人の現実と合致しなかったのだ。しかし、保健室の先生や友人の夕華は問答無用で明咲子を現実に戻そうとする。

ここで屈しては朝ドラの主人公ではなくなってしまう。朝ドラの主人公は自分の世界に周囲を巻き込むからこそ主人公なのだ。おそらく作り手もそこまで承知したうえで、希望的なラストを演出している。明咲子は明咲子の現実を生きて構わないのだ。

2023年/カラー/36分
監督・脚本・編集:ハインズ麻里子/音楽:永岡史帆/撮影:榊原 滉/撮影:安井 彬/撮影:伊藤慎之介
出演:森川千滉、三谷菜々美、泉水美和子、新開ひかり、渡邉透羽

『ふれる』(監督:髙田恭輔)

死を受け入れるのに必要な時間

あらすじ
父と姉と3人で暮らす小学生・美咲。他界した母の死を受け入れきれていなかった。工房に置かれた陶器の音が好きな美咲は、皿の音を確かめる。その様子を見た工房の主人は美咲に陶芸を教える。

後日、義母のサトコを含めた家族4人で美術館に出かけるが、美咲はサトコに対して冷たい態度をとってしまう。母が座っていた席にサトコが座るのも認められず、微妙な距離感が残っていた。
担任の先生と、上級生が作った陶器を眺め、陶芸をする機会を楽しみにする美咲。しかし、先生が居なくなったタイミングで上級生が現れ、美咲から皿を奪い取る。その際、皿が割れてしまい、上級生は泣いてしまう。
美咲は家出をする。山を越え、夜になり、見知らぬ土地で、美咲は灯籠流しの列を見つける。列に混じり、亡き母と会話した後、美咲は事故に遭う。
病院に見舞いに来た姉と父。退院後、どうして美咲が家出をしたのか悩む父を励ます姉。姉から上京を決めたことを告げられた美咲は、姉の旅立ちを認める。翌朝、美咲は庭で母が水撒きをしている姿を見かける。庭に出たが、そこに母の姿は無かった。美咲は、庭にやって来たサトコに頼まれ、母の話をする。
引っ越しが決まり、最後に工房でお椀を作る美咲。その頃、父と姉は母の墓参りに訪れていた。お互いに感謝をし、姉は母に旅立ちの挨拶をする。美咲は担任の先生と陶芸を続ける約束をする。美咲は車の窓から手を出して陶芸のイメージをする。

感想
親しい誰かの死を受け入れることはどれだけ耐え難いことなのか。まだ小学生の少女にとって、母の死を受け入れることは簡単なことではない。父だけでなく、優しい姉からも、やんわりと母の死を受け入れるよう諭される美咲。

母の席に皿を置かなくなること、義母と親しくすること、義母が母親の席に座ること。それらは母を忘れたり、切り捨てたりすることではないと、理解出来るように説明してあげられれば良いが、人の死はそう簡単に納得させられないのがもどかしい。

引っ越しというやや強引なやり方で母の死を受け入れる形になってしまっているが、美咲は既に母の死を受け入れていると思いたい。

2023年/カラー/60分
監督・脚本・編集:髙田恭輔/撮影・グレーディング:市川雄一/録音・音響効果:土手柚希/美術:黒田晴斗/助監督:宮川彰太郎
出演:鈴木 唯、仁科かりん、河野安郎、水谷悟子、松岡眞吾

『Flip-Up Tonic』(監督:和久井 亮)

人間とは?

あらすじ
大学生のタラノは開発されたばかりだという人型アンドロイド「リーチャー」のジョーと研究員のシントウは喫茶店に向かう。

シントウが水をこぼし、タラノは着替えに行く。水をこぼしたことに誤ったのはシントウではなく、ジョーだった。タラノが着替えている隙にジョーは居なくなってしまう。タラノとシントウはジョーを探しに行く。
時間は遡る。タラノは新型アンドロイドの実験に参加するため、研究室を訪れる。研究主任のホンマと研究員のカノから実験の説明を受けるタラノ。秘密主義のため、人間と同じようにリーチャーと接するという条件下で実験は始まる。
タラノとシントウは実験から戻ってくる。結局ジョーは見つけられず、タラノは謝罪するが、ホンマとカノはジョーが居なくなったことを気にする様子はない。
シントウはリーチャーだった。
実際、ジョーと呼ばれていたのがシントウだった。シントウは学生と一緒にリーチャーを研究室に運び込む。中にはシントウを名乗っていたリーチャーが入っていた。

感想
精巧なアンドロイドの実験を描いたSFショートムービー。新型アンドロイド「リーチャー」の実験を描いているが、リーチャーだけでなく、実験に関わる研究員たちも皆、どこか不自然な動きをしているように感じる。

リーチャーなのかどうかを判断する材料として“躓く”というのがひとつのポイントになっている。しかし、これは最も簡単なクイズのように思う。どこまでがクイズなのか疑い出すと、ほんの少し、言葉に詰まる。笑顔がぎこちない。なども気になって来る。これはヒューマンエラーなのか、キャストが緊張しているからなのか、意図的なカメラワークが取り入れられていることを考えると、ギリギリのラインをあえて演出しているようにも思えてくる。

一体誰がアンドロイドなのかを疑うことは、裏を返せば誰が人間なのかを疑うことにもなる。自分は何をもって、他者を人間と判断しているのか、その判断基準に揺さぶりをかけてくる哲学的な問いかけが本作の魅力といえるだろう。

2023年/白黒/26分
脚本・監督・編集:和久井 亮/撮影:高橋怜央/録音・整音:増喜公美/音楽:柴田優華/スチル撮影:石坂洋子
出演:丸田亮祐、Axol、高田享太、三宗 凪、杉田南実

『Parking Area』(監督:増山 透)

幾何学的パターンが気持ち良い

あらすじ
高速を走る一台の車。乗っている女性の瞳に風景が映る。辿り着いたパーキングエリア。不思議な世界に迷い込む。

感想
ミニチュアとCGを組み合わせたような独特な映像。幾何学的なパターンが印象的な未来都市とアンビエントサウンドに癒される。

あの世界を見て、女性の瞳に映る世界はどう変わるのだろうか。女性を乗せた車は星空へ向かって走り続ける。もしかすると、その先には迷い込んだ世界で見た未来都市があるのかもしれない。そんな探究心があのラストに表れているようだ。

2023年/カラー/9分
監督・脚本・制作・編集 : 増山 透
出演:岡野紗咲

『逃避』(監督:山口真凜)

テイカーに削られ続ける

あらすじ
人気のない夜道に車を乗り捨てる男。医者志望の大学生・和真は恋人の彩乃と同棲している。彩乃は和真が何かを隠している様子を感じて、問い詰めるが和真は何も答えない。

翌朝、家に警察が訪ねてくる。居留守を使った彩乃は、和真とドライブに出かける。その日の晩、和真は医者になれそうにないと彩乃に告げる。彩乃が目を離したすきに和真は消える。和真を見つけた彩乃だったが、医者だから一緒にいるだけだと和真から突き放される。
彩乃は和真を置いて車を出す。彩乃は元恋人と再会する。彩乃は昔とは変わった恋人に励まされ、和真の元に戻る。何も言わない和真を叩き、抱きしめる彩乃。
帰宅後、朝食を食べ、和真を警察に送り届ける。「待っていてくれないよね」と言う和真に対し、彩乃は「わからない」と答える。彩乃は1人、川で水切りをする。

感想
なぜこの2人は一緒にいるのか。幸せだった頃の2人は描かれず、空虚な時間を過ごす2人だけが映し出される。彩乃は和真を心配するが、和真がその気持ちに応えることはない。彩乃の気持ちをひたすらに消費させる和真に苛立ちを覚える。

状況は変わらず、独りよがりな行動を続ける和真に嫌気がさす。次第に、そんな和真に優しくし続ける彩乃にも苛立ってくる。踏切のシーンで、彩乃は感情をぶつけるが、その後に元恋人に会いに行ってしまう。

お互いがお互いを消費するだけの関係性。何も生まれない関係性。彩乃が1人になることを決めるきっかけとなった数日の物語。見ているこちら側もただただ消費させられる。辛い時間だけが過ぎていった。

2023年/カラー/57分
監督・脚本・編集:山口真凜/プロデューサー:田中佐知彦/撮影:佐久間アキラ/照明:照井康平/サウンドデザイン:鈴木紀貴
出演:サトウヒロキ、村上由規乃、諏訪珠理

『うらぼんえ』(監督:寺西 涼)

切なさあふれる黄泉がえり

あらすじ
絵画教室の講師をしている真司は、息子の啓太を海で亡くした。真司の腕には啓太が掴んだ指跡が残っていた。真司は絵画教室の生徒が描いた紋付袴と白無垢の骸骨の絵を見て、ムサカリ絵馬に代表される死後結婚の風習を知る。

真司は啓太を成仏させるため、啓太と架空の結婚相手を描く。花型のピアスを書き加え、母に絵を見せるが、母はピアスを消してしまう。翌日、真司は生徒と一緒に野外制作のため、啓太を亡くした海辺に出かける。
ドローンで映像を撮っていた生徒に、酔って立ち小便をしていた男性が難癖をつけようとするが、躓いた勢いで意識を失ってしまう。真司が殴ったことで意識を取り戻した男性のもとに、男性の息子の陽平がやって来る。
真司と陽平は男性を家まで送り届ける。そこには、真司が描いたものに似たピアスをつけた女性が居た。真司は陽平に啓太の面影を感じ、母に電話をする。事情を聞いた母は真司に「そこはあなたが居ていいようなところではない」と立ち去るよう忠告する。息子を亡くした人間の気持ちがわからないと母に訴える真司だったが、母は「真司を亡くした」と告げる。
真司は既に死んでいた。逆に啓太は結婚して、妻と息子の陽平と幸せに暮らしていた。自分の死を悟った真司は、啓太の絵を見て、成長を感じる。仏壇に自分の遺影が飾られているのを確認し、縁側に向かう真司。外を照らす提灯の灯りがひとつ消える。

感想
2020年のPFFアワード準グランプリの『屋根裏の巳已己』の寺西涼監督の新作。お盆を舞台にした”黄泉がえりもの”で、『シックス・センス』(1999)のような展開になっている。

山形の一地域にある風習”ムカサリ絵馬”。未婚で亡くなった人の隣に架空の結婚相手を描いて死後の世界での幸せを願うらしい。安易にホラー映画にすることも出来そうな題材だが、本作にホラー要素はなく、工夫された物語に「あぁ、かわいそうに…」という印象を受けた。

2023年/カラー/28分
監督・脚本・編集・音楽:寺西 涼/録音:馬原洋幸、三村一馬/撮影応援:団塚唯我/制作:稲生 遼
出演:田口ゆたか、阿部能丸、吉村健太郎、加島知枝、下東久美子

『こころざしと東京の街』(監督:鈴木凜太郎)

迷いだらけ、でもそんなもん

あらすじ
ある放課後、高校生のリョウは進路希望調査書を書いていた。友人のヒロがやって来て、進路について話をする。ヒロは学費と就職を考え、国立の経営を目指している。リョウは何か意味のあることをしたいが、進路は固まらなかった。

調査書の提出は翌日に持ち越され、2人は帰路につく。道中、部活をサボってカラオケに行こうとする友人に出会い、リョウはカラオケに行くことにする。ヒロは勉強したいと言い、帰ることにする。カラオケに行く道の途中、思い直したリョウはヒロを追いかける。しかし、あと一歩のところでヒロと同じ電車に乗ることは出来なかった。

感想
ドストレートかつ、シンプルな高校生あるあるを詰め込んだ物語。リョウはなにかやりたいけど、その何かはわからない。わからないから進路も決まらない。一方、ヒロは現実的な視点で潰しが効くような進路を選択する。2人の道はT字路で別れ、再び交わることなく、物語が終わってしまう。

台詞に覇気がなく、無機質なテンションでの会話が逆にリアルな高校生の気持ちを反映させているようにすら見えてくる。それだけ、多くの高校生にとって、進路の選択は消去法の魅力にかける作業になっているのかもしれない。

一応、自分も受験を経験はしたけれど、「絶対にこれ!」という道はなく、「なんとなく好きだったからこれかなぁ?」という感じで進路を決めた記憶がある。それは現在進行形で、常に選択に迫られ、その結果が正しかったのかどうかを考え続ける日々だ。しかし、あくまで結果は経過観察であり、一時点の結果を繋げて、推移を楽しむようなものだと私は捉えている。

なので、この物語で2人の道が交わらなかったことも失敗を意味しない。今後の人生で何が起こるかはわからない。意図して交わらせなくてもいいし、交わる努力をしてもいい。いくつもの選択の結果の推移を楽しむ。それくらいのモチベーションでいた方が生きやすいような気がする。

2023年/カラー/10分
監督・脚本:鈴木凜太郎/撮影・照明:内堀駿介/録音:森田ことわ、根本大雅/助監督:大竹洸也
出演:小林栞大、土屋 翼、村上顕輔、鈴木凜太郎

『リバーシブル/リバーシブル』(監督:石田忍道)

無意識の偏見

あらすじ
デリヘルドライバーの田中は、デイケアのミオの助けを借りながら生活をしていた。息子の開と暮らしていた。薬を処方されているが、その薬を飲むことはなかった。ある日の車中、デリヘル嬢のミサキは田中が開と話していることに興味を示す。ミサキには妖精が見えるらしかった。

後日、ミサキと開と三人で焼肉を食べに行く田中。ミサキと妖精の話をしていたところ、開は突然消えてしまう。その夜、開は寝ている田中の股間をまさぐるのだった。
デリヘル嬢たちが何を考えて働いているのかわからないと愚痴る店長に職員会議を勧める田中。職員会議が開かれ、デリヘル嬢と話をする。話はデリヘル嬢レイカの体型の話におよび、みなが太っている彼女の個性を尊重する。
田中はミサキと妖精を探しに出かける。その道中、田中は高架下に書かれた文字を差し、自分は、ある事件の犯人の秘密を知っているらしいとミサキに告げる。後日、書類にサインをしているミサキを見た田中は高架下の文字を見に行き、犯人が逮捕されたか警察に電話をかける。
田中は開の幻覚を見ていた。デイケアスタッフが持ってくる薬を飲むと開が消えてしまうため、田中は薬を捨て続けていた。その頃、川辺で妖精を探すミサキの方向に向かって、老婆が話しかける。治療に専念することを念押しされた田中は仕事を辞めることをミサキに告げる。ミサキは退職後も会ってくれると言い、田中は喜ぶ。2人は川辺に向かい、元歌手だったミサキの歌を聞く。
部屋にやって来たミオは田中の部屋が片付いていることに驚く。田中はミサキと結婚することを夢見ていた。それを聞いたミオは、結婚についてちゃんと考えるべきだと主張する。その夜、田中は開に襲われ、「お前ヤリたいんだろ」と罵倒される。田中はミサキに全てが妄想なのではないかと不安を吐露する。ミサキは妖精に相談すれば嫌な声が聴こえなくなると繰り返す。
田中はミサキを部屋に入れる。ミサキは不安が理由で風俗の仕事を選んだ。田中も自分が不安を抱えていることを告げ、SEXしてくれないかミサキに尋ねる。金を払おうとする田中に、ミサキはお金は要らないと伝える。田中は自分を差別してきた人間は死ねばいいと思って生きてきた。そして、今ミサキを差別している自分に気付き、田中はSEXを断念する。ミサキは田中を可哀そうだと思ったと告げ、自分も同じだと田中を励ます。懐中電灯が照らす天井を見て、田中は「月が奇麗ですね」とつぶやく。
翌朝、ミオがやって来る。ミサキと三人で、開のいたずらを止めさせる方法を考える会議を開いた。田中は開を連れて川辺に行き、ミサキと三人で妖精を探し、けん玉で遊ぶ。遊んでいると、開もミサキも消えてしまう。ミサキは風俗嬢の待機部屋でスマホをいじっていた。田中は部屋で電車のおもちゃで遊んでいた。電車の音が響く中、「寂しかったんだろ。悔しいんだろ。」と誰かが言う。

感想
かなり救いの無いラストに現実の厳しさを思い知らされる。統合失調症なのか、病名はわからないが、田中は幻覚が見える。どこまでが現実なのかは別として、田中にとって話し相手になるイマジナリーフレンドは全員、”現実に存在する人”という認識のはずだ。

他人から見れば、もはやどこからどこまでが現実なのかわからない世界だが、田中はその世界を現実と認識して生きている。SNS上だけでやりとりするような

この作品のラストを見た直後、救いのない現実の厳しさを思い知り、絶句した。しかし、視点を変えると幸せなラストとも考えられることに気づく。

人それぞれ理想とする世界があると思う。あんなこといいな出来たらいいなと考えてはみるが、なかなか自分の理想通りに人生は進まない。少しでも理想に近づいた錯覚を覚えられるよう、SNSや仮想現実が作られたのではないかとすら思える。人の夢は終わらないわけだ。

主人公の田中もまた、あんなこといいな出来たらいいなと日々考えている。色々なことを知って、自分の理想とする世界に近づきたいのだ。しかし、社会が彼を邪魔する。社会が共有する”正常”は、田中を人間的に成長させてくれる要素を取り除こうとする。

そう考えると、実のところ、自分はあのラストを無意識に望んでいたのではないかと気付かされる。「田中が正常になってほしい、現実を生きることこそ重要なんだ」と自分の考える”正常”を押し付けてしまっていたのかもしれない。

田中にとっては、彼の見ている世界こそ現実であり、生きるべき世界だ。だとすれば、他人が壊してよいものではない。田中の生きる現実と、自分の生きる現実の重なる部分から見つめていけば、”正常”、”異常”の境目は溶けていく。楽観的と非難されるかもしれないが、そんなことを自然と考えていた。

2023年/カラー/77分
監督・脚本:石田忍道/撮影:平良良樹/助監督:斎藤千晃/録音:伊藤昭宏/車両:井上歩夢
出演:田丸大輔、杉崎みなみ、小松遼太、奏羽 茜、藤原絵里

『肉にまつわる日常の話』(監督:石川真衣)

ポジティブな捉え方

あらすじ
養豚場を舞台にした映画の影響で、肉を食べなくなった人の話

感想
個人の体験をアニメーションを用いて描いたショートエッセイムービー。

人それぞれ、大なり小なりトラウマ的体験から、苦手になってしまったことはあると思う。本作の場合、幼少期に見た映画がトラウマになって、肉を食べなくなってしまったらしい。肉を食べないことで色々と不自由が生じているはずだけど、その経験すらも無駄ではないと考えるポジティブシンキングは生きる上で、とても大切だと思う。

それにしても、2021年のPFFアワード『Journey to the 母性の目覚め』(監督:岡田詩歌)など、アニメーション×ショートムービー×個人の体験に基づくエッセイは相性が良いと改めて感じる。ショートムービーの人気の高まりに伴って、このスタイルは一大ジャンルになるだけの親しみやすさを持っている。

2023年/カラー/4分
監督・脚本・編集:石川真衣

『Sewing Love』(監督:許 願)

束縛の果てに

あらすじ
身体に空洞がある男は、その空洞をミミズで埋めようとするが、埋まらない。猪に追われていた女性を救い、自分の空洞にはめてみた。ぴったりとはまった男と女性は楽しい日々を過ごす。

男性はそんな夢を見ていたが、自分の身体は空洞のままだった。孤独に苛まれた男は蝶を追っていた女性を捕まえ、空洞に縫いつける。女性はどんどん衰える。蝶を与えても時すでに遅しで、女性の魂は男から抜け出た。それと同時に男の身体は森に生える一本の木に突き刺さった。男の肉体は朽ち果て、森の一部となる。

感想
約8分のショートアニメーション。多幸感や、孤独をビジュアルで再現することに成功している。派手な色使いと、どんどん変形するビジュアルに圧倒されるが、物語もきちんと追えるような良いバランスになっている。

男性による束縛をテーマにしており、男の身勝手が暴走していく。縫いつけられた女性はかたちだけで考えれば幸せな頃と同じように男性の空洞に収まっているが、心はそうではない。心が死んだ女性と一体となっていることで、男性も消耗し、最後には木に貫かれ、屍となってしまう。

形だけの関係になってはいないか?出会った当時と変わらず心は動いているか?そんなことを自問自答しながら見ていた。

2023年/カラー/8分
監督・脚本・編集・作画・色付け:許 願/音楽・音響・効果音:佐藤七海

『じゃ、また。』(監督:石川泰地)

君は枯れているか?

あらすじ
大学に行かなくなったナリヤスの家に友人のシュウタがやって来る。シュウタはナリヤスが人間らしい生活を送っているか生存確認に来ていた。2人は以前やりかけていた人生ゲームを始める。

怪談話をして、シュウタはご飯を買いに行く。どこからともなく流れてくる東京音頭の音楽に導かれ、外に出るナリヤス。どこかの劇場で一人、映画を見るシュウタ。その映画は2人が昔撮った自主映画だった。シュウタを追ってスクリーンの前まで向かったナリヤスは誰かに押されて壇上から落ちる。
部屋に戻り、人生ゲームを再開するナリヤスとシュウタ。就活の話になり、ナリヤスのスーツ姿は見たことがないが、喪服は見たことがあると告げるシュウタ。シュウタは既に死んでおり、自身の葬式にやって来たナリヤスの喪服を見たことがあったのだ。ナリヤスもシュウタが死んだことをを理解したうえで会話をしていた。
お盆だというのに、鍋を作るシュウタ。シュウタがやって来た理由を推測するナリヤスは映画を完成させられなかったことが原因だと考える。死んだときの記憶を失っているシュウタは首を吊るマネをするが、思い出せない。シュウタは死後の行先を決められていなかった。
2人は昔撮った自主映画を見直す。シュウタは、また映画を作ることを勧めるが、ナリヤスは何も思いつかないと言う。そんなナリヤスにビンタを食らわせるシュウタ。ナリヤスに衝撃が走り、まだ枯れていないことを悟らせるシュウタ。シュウタは「じゃ、また。」と言い残し部屋を出ていく。


感想
お盆に友人がやって来て、生きている自分に何かを残していく。”黄泉がえりもの”の鉄則に則って、うだうだと生きているナリヤスにシュウタが”闘魂”を入れにやって来る。

設定上、シュウタはナリヤスとの記憶を基にして会話をする。彼らにとっての記憶は映画撮影が大半を占めている。ナリヤスとシュウタが映画を撮っていなければ、2人が過去の作品を見返すこともなかっただろう。そういう意味で、過去にやって来たことは未来に活きている。

決断した過去があったからこそ映像が残り、その映像があったからこそ、また映画を撮りたいと思えるようになる。現時点で決断出来ない人間になっているナリヤスを変えたのはシュウタだけでなく、過去の自分だったと捉えることも出来る。お盆は亡くなった人と共有した記憶を通じて、今の自分を変えるきっかけにもなる機会だと新しい視点を得た。

2023年/カラー/52分
脚本・監督・編集:石川泰地/撮影・グレーディング:新藤早代/録音・MA:寒川聖美/録音:佐藤友亮/音楽:関口 諭
出演:石川泰地、国本太周

『ハーフタイム』(監督:張 曜元)

技能実習制度の暗部を照らし出す。

あらすじ
中国人技能実習生の慶陽(ケイヨウ)は新しい職場を探していた。面接が難航しているだけでなく、賃金未払いなど問題は山積みであった。慶陽は組合を変えようとするが、中国語対応出来るスタッフがおらず、諦める。同室の友人からはまじめにやっていても金は稼げないと言われる。しかし、違法行為をすれば、不法滞在者になってしまう状況で、慶陽は王(ワン)に従うしかなかった。

王とその夫の中村のもとに、実習生保護協会の三木が訪れる。技能実習生の陳文(チンブン)への賃金未払いを訴えるが、中村と王は訴えを無視し、暴力を振るって追い払う。慶陽はその現場を目撃してしまう。
ある夜、慶陽と同室の男が施設から逃げ出す。慶陽も同行するよう誘われるが、誘いには乗らなかった。翌朝、慶陽は王から「逃げ遅れたのだろう」と言いがかりをつけられ、子どもが可愛そうだと罵倒される。実習生たちが参加する中村の誕生会に呼ばれず、慶陽は孤立していく。慶陽は現状を変えるため、三木に仲介を依頼する。
後日、慶陽は面接を受ける。沖縄で大根を育てていたことを伝えるも、沖縄では大根は育たないと、嘘つき呼ばわりされてしまう。そこにハンマーを持った陳文が乱入し、同席していた王を殴打する。破綻した面接の場で、慶陽は落涙する。
慶陽は現場仕事の職に就き、働き始める。

感想
日本で技術を学び、母国に還元する技能実習制度。現実には低賃金・長時間労働に加え、賃金未払い、劣悪な労働環境など問題は山積している。その結果、職場から逃げ出し、不法滞在者になってしまう流れが生まれてしまっている。一方で、技能実習生を安価な労働力として酷使することで、商品の価格を抑えるシステムが出来上がっているため、この制度を利用する企業側にはメリットが多い。搾取が続く負のスパイラルが生まれてしまっている。

100万円の借金をしてまで来日した結果がこれでは、この制度の本来の目的は果たされていない。帰国後、起業して成功した例もあるらしいが、それも稀なケースだろう。”安く作って高く売る”が基本原理の資本主義の中で、この制度は悪用され続けてしまうのか。本来の目的を果たして、実習生とその母国に還元されれば、本当の意味で日本へのリスペクトを得られる。そこに気付いて動ける受け入れ企業が増えることを祈る。

2023年/カラー/30分
監督・脚本:張 曜元/プロデューサー:徐 梅、筒井龍平/撮影・グレーディング:由 進/サウンドデザイン:鈴木昭彦
出演:阿部 力、姜 楠、張 晟、村松和輝、秋美敏春

『不在の出来事』(監督:川口淳也)

風と光が主役

あらすじ
一人暮らしの男性が遊びに出かけた後の誰もいない部屋の物語。

感想
技ありの一本。風がいたずらし、光が踊る。美しい構図で収められた誰もいない部屋が、自分の知らない空間の一面を見せる。

落ちそうな皿については作為が働いていてしっくりこないが、それ以外に自然と起きる出来事は神秘的にすら見える。

2023年/カラー/13分
監督・構成・撮影・録音・編集:川口淳也/制作応援:大川晃平
出演:川口淳也、丹羽 歩(声)

配信情報

配信プラットフォーム <配信期間:9/9(土)12:00~10/31(火)23:59>
DOKUSO映画館
★「観客賞」にネット投票可能
・映画祭プログラムA~I:各700円〈税込〉
・単作品:各300円〈税込〉
・22作品観放題パック:3,300円〈税込〉


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本ページの情報は2023年9月時点のものです。
最新の配信状況はU-NEXTサイトにて
ご確認ください。
映画祭プログラムA~I:各700円〈税込〉

受賞結果

グランプリ
🏆リテイク🏆 中野晃太
準グランプリ
🏆ふれる🏆 髙田恭輔
審査員特別賞
🏆うらぼんえ🏆 寺西 涼
🏆鳥籠🏆 立花 遼
🏆リバーシブル/リバーシブル🏆 石田忍道
エンタテインメント賞(ホリプロ賞)
🏆完璧な若い女性🏆 渡邉龍平
映画ファン賞(ぴあニスト賞)
🏆じゃ、また。🏆 石川泰地
観客賞
🏆移動する記憶装置展🏆 たかはしそうた

 

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