【FILM REVIEW】『モンスーン・ウェディング』インドの結婚式って楽しそう

『モンスーン・ウェディング』

王道ストーリーの裏に隠れた、いくつもの愛。

作品情報

『モンスーン・ウェディング』(インド、アメリカ、フランス、イタリア/2001年/114分/原題:MONSOON WEDDING)

監督:ミーラー・ナーイル
脚本:サブリナ・ダワン
出演:ナセールディン・シャー、リレット・デュベイ、ヴァソンダラ・ダス、イシヤーン・ナイール、シェファリ・シェティ、ヴイジエー・ラーズ、ティロタマ・ショーム

3.6

あらすじ

ニューデリーに住むビジネスマンのバルマ家の庭では結婚式の準備が始まっていた。長女アディティが親の決めた縁談を急に承諾したのだ。父親のバルマ氏は世界各地に散らばった親戚縁者を集めて、モンスーンの時期に伝統的な豪華な式を挙げようとするが….。不倫を清算できずに迷う長女。幼いころの忌まわしい出来事を忘れられずに悩む従姉。従兄に一目惚れしたティーンエイジャーの情熱的なアプローチ。不器用なウェディングプランナーと貞淑なメイドの恋。そして、娘の幸せを願い式の成功に心をくだく父親の苦悩。結婚式までのゴージャスな宴が繰り広げられる中、家族はそれぞれに悩み、愛に対して様々な選択をしていく。やがて降り注ぐ、モンスーンの雨。家族の再生と、躍動感に満ち溢れた未来を予感させながら・・・。

おすすめポイント

日本とインドの国交樹立50年を記念して配給された本作は、ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得している。これはインド映画の巨匠サタジット・レイが『大河のうた』で受賞して以来の快挙であった。

本作の魅力は、世界中に散らばった親戚が一堂に会する様々な障害を乗り越えて、結婚式を成功させようとする家族を描いた王道ストーリーの裏で展開される、様々な事情を抱えたひとびとのサブストーリーだ。

豪華な結婚式の裏で密かに育まれた純愛

心を打たれたのはウェディングプランナーのデュベイとメイド(お手伝いさん)のアリスの恋模様。デュベイは仕事柄、裕福な家族の豪華な結婚式を演出してきた。しかし、彼自身は裕福とは言えず、好きな相手も居ない。

仕事中に水を差し入れてくれたことがきっかけでアリスと知り合い、2人の距離は近づくが、部下たちの誤解でアリスに泥棒疑惑をかけてしまう。デュベイは誤解を解き、プロポーズをするのだが、彼が初めて自分のためにした演出は黄色のマリーゴールドでハート型に作られた花束と、肋骨っぽいちょっと不気味なモニュメント(私にはそう見えてしまった…)だった。

その後、メインストーリーの豪華な結婚式が行われる裏で、デュベイとアリスはマリーゴールドで作った傘の中で結婚の誓いをする。本筋の大人数の結婚式とは対照的に、デュベイ夫妻の結婚の立ち会いはたった3人の部下なのだが、それでも全力でお祝いする部下達の姿を見ると、少し泣ける。貧富の差をもろともせず、純粋な””祝福””だけがある美しいシーンだった。

悪しき文化との決別

もう一つ、重要なサブストーリーは身内に性的虐待をしてきた叔父との決別を描いている。アメリカで働く叔父は経済的に裕福なため、一族の中でも、一目置かれる存在だった。その叔父が自分の姪に性的虐待をしていることを知った一族の長は姪を守るか、叔父の行為に目を瞑るか決断を迫られるのだ。

本作では、アメリカの経済や文化がインドでもスタンダードになりつつある状態を危惧する人々の姿が頻繁に描かれている。なので、アメリカに染まった叔父≒インド文化を蹂躙する危険な存在にも見えてしまう。

ただ、より重要なのは、成功している叔父よりも、不当な扱いを受けた姪を守る道を選んだ一族の長の決断だ。

インドでは女性の地位が低いらしく、『パッドマン 5億人の女性を救った男』では、生理が汚らわしいものだとされる文化が描かれている。また、ヒンドゥー教では19世紀までサティー(寡婦殉死)という文化があり、女性には酷な社会だった。

こういった悪しき自国文化との決別が、姪を守る一族の長の決断から見えてくる。

様々なサブストーリーが絡み合いながら、インド社会を映し出した本作。メインストーリーは雨の中、誰も彼もがインド式ダンスを踊り、結婚式の悲喜交々も描かれた素晴らしい作品なので、是非ご鑑賞いただきたい。

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