沖縄戦の戦死者を悼む行動的慰霊
作品情報
『骨を掘る男』(日本、フランス/2024年/115分)
監督:奥間勝也
出演:具志堅隆松
配給:東風
3.6
あらすじ
具志堅隆松。齢70にして、沖縄戦の戦死者の遺骨を見つけるため、沖縄の土を掘り続けている。その月日、約40年。死者の魂に少しでも近づくこと、彼はそれを”行動的慰霊”と呼ぶ。
感想
現代も続いている沖縄戦
1945年3月26日、米軍の慶良間諸島上陸から、約半年に渡る沖縄戦が始まる。犠牲者は10万人を越え、その多くは民間人であった。現在、沖縄県糸満市にある平和祈念公園には、平和の礎(いしじ)と呼ばれる記念碑が並び、その一つ一つに沖縄戦の犠牲者たちの名前が、地方や国など関係なく刻まれている。
しかし、この石碑に名前は刻まれていても、その遺骨が見つかっていない方も多い。その亡骸は今も沖縄の土に埋まっている。そして、1メートル四方あたり4発の砲弾が撃ち込まれ、地形が変わるほどの砲撃を受けた沖縄の土には、砲弾の破片や不発弾なども未だに埋まっているのだ。行動的慰霊は死者に近づくだけではなく、命がけの作業でもある。
行動的慰霊の意義
沖縄本島南部には、今もまだ沖縄戦の戦死者の骨が土の中に眠っている。具志堅隆松氏は40年以上遺骨発掘を続けている。沖縄戦から80年が経とうとする現在、遺骨が眠る土が埋め立て地に使われることが決定され、死者への尊厳が傷つけられている。そんな中で、沖縄戦戦死者の名前を読み上げる会が開かれる。死者に想いを馳せ、近づこうとする行動的慰霊は続いていく。
戦後80年弱が経ち、戦争経験者の数は減っている。あと20年もすれば、第二次世界大戦を経験した人々は世界中から居なくなる。戦争で死んでいった人々の想いは忘れ去られるのだろうか。この映画に映し出される骨を掘る、語り継ぐという行動的慰霊が続く限り、戦死者の無念は忘れ去られることはないはずだ。
コメント